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事業開発におけるインタビュー調査は、その事業の成否を分ける重要なプロセスです。事業アイディアの創出と検証、ビジネスモデルの構築、事業ローンチ後のPDCA等、様々な場面において、適切なインタビュー調査を行うことで、事業の成功確率を高めることができます。
ただしインタビュー調査は闇雲に行うべきでなく、正しい「方法論」を学んだ上で実施することが重要です。メルセネールが独自に行った調査においても、黒字化事業と撤退事業を分ける要素として、インタビューの「方法論」を学んでいるかどうかの差が顕著であることが示されています。
※上図の調査結果を以下の資料で公開しております。ぜひこちらも合わせてご覧ください。
【調査レポート】新規事業開発におけるインタビューの実態調査 ~事業を成功させる差とは~
本記事では、事業開発で使えるインタビュー調査実施時の方法論、および基本スキルについて解説します。
なお新規事業のみならず、あらゆるビジネスインタビューでも使える内容となっております。是非ご参考ください。
インタビューのプロセスは大きく以下の3つに分けられます。
それぞれにおいて方法論が存在しますが、本記事においては「実施」の部分にフォーカスして解説をしていきます。
どのようなインタビュー実施においても重要な原則は「相手の話を理解した上で、掘り下げる」ことです。これから解説する内容はいずれも「正しく掘り下げる」ことに繋げる方法論としてご参考ください。
インタビューの冒頭は非常に重要な瞬間です。始め方次第で、相手からの信頼を獲得し、有意義なインタビューになるかどうかが決まります。
効果的にインタビューを始めるために、次の3つのプロセスを意識しましょう。
それぞれのポイントを説明していきます。
優れた営業マンはアイスブレイクが得意だと言われますが、インタビューにおいても重要なプロセスの1つです。
その一つの理由として、「インタビュイーはインタビュアー以上に不安であるから」が挙げられます。インタビュイーは「これから何を聞かれるんだろう」「何か役に立つことを言えるのだろうか」等と、こちらが想像している以上に不安に感じているケースが多いのです。
適切なアイスブレイクを行うことで、この不安を取り除き、安心して語ってもらえる空気を作ることができます。
アイスブレイクの初歩的なやり方としては、「とりあえず天気など、共通の話題を話す」等があります。ただし慣れている方は、「相手にとって興味を引く事項を示し、話すメリットがあると感じさせる」、「聞きたいテーマにおける相手の素養(予算権あり、新しい物好き、等)をさりげなく確認する」ことまで意識できると良いでしょう。相手の素養を最初に押さえることで、その後の回答にある前提を想像しやすくなり、適切なインタビューがしやすくなります。
アイスブレイクに続いてインタビューの背景と目的は必ず伝え、十分な共通認識を醸成した上で始めるようにしましょう。最初に目的を伝えることで、より適切な話をしてくれる可能性が高まります。
また合わせて、「インタビュイーが不利益を被ることが無い」旨を丁寧に伝えることも心がけましょう(インタビューで聞いた話の利用範囲の説明等)。インタビュイーが自身に不利益が無いことを理解すると、より協力的になりやすくなります。
インタビューにおける質問は、途中で流動的に変わっていくものです。しかし、スタート地点になる1問目は必ず決めておくことができるので、ここはこだわって定めておくようにしましょう。
1問目を決めるポイントとして、インタビューを「全体から順に絞っていく流れ」にするか、「早い段階で核心に迫る流れ」にするかの視点があります。どちらの進め方を取るか定める上でも、基点となる問いは重要になります。
また、1問目がわかりにくい・曖昧過ぎると、それがインタビュー全体の印象になってしまい、相手から良い回答が得られにくくなる可能性が高まってしまいます。
また最初の質問に入る前に、インタビュイーに「自分を語ってもらう」時間を設けることもおすすめです。具体的には、「本題に入る前に○○さんのこれまでのご経歴や取り組まれたことを簡単にご紹介いただいてもよろしいでしょうか?」のような質問を挟めばOKです。
多くの人にとって自分の経歴等を話すことは難しくないので、インタビュイーの口慣らしとなり、話しやすい状態にする効果があります。また、インタビュアー側としても、相手のバックグラウンドを把握することが出来るため、効率的なインタビューが可能になる効果もあります。
「インタビューでは、オープンクエスチョン(自由に答えてもらう質問)とクローズクエスチョン(はい or いいえ で答えられる質問)をうまく使い分けましょう」とよく言われます。これは間違っていませんが、実はオープンクエスチョン・クローズクエスチョンそのままでは使い勝手があまり良くありません。
そこでおすすめしたいのは「範囲付きオープンクエスチョン」と「選択肢付きクローズクエスチョン」を使うことです。オープンクエスチョンは範囲を絞ることで、クローズクエスチョンは選択肢を付けることで話が進みやすくなります。
質問は、「オープンクエスチョン」「範囲付きクローズクエスチョン」「選択肢付きクローズクエスチョン」「クローズクエスチョン」の4つに分類して捉えると良いでしょう。以下に具体例と使いどころを示します。
・使いどころ:
・隠れた前提も含め広くとらえたいとき
・話が煮詰まって来て、改めて視点を引かせたいとき
・使いどころ:
・話し下手できっかけが掴みにくい人
・序盤での全体感を共有しながら進めたいとき
・使いどころ:
・自分なりの意志を表示しにくい、何を話していいかわからなそうな人
・いくつか聞きたいことがあるが相手が何位に興味があり詳しいかわからないとき
・使いどころ:
・明確な回答が欲しいとき
・会話の範囲を絞り込みたいとき
また、次の3つの基本質問タイプを覚えておくとインタビューでの話の展開がしやすくなります。
相手の発言に対して、その背景にある事実や考えを捉える際に有効です。
曖昧な概念・意見をよりわかりやすく捉える際に有効です。
他の可能性やより有効な選択肢が無いか確認する際に有効です。
相手からの信頼を獲得し、有意義なインタビューとするためには「聞き方」自体も重要です。以下の注意事項を意識し、インタビュイーのモチベーションを下げないように心がけましょう。
こちらは聞きたいことはわかっていますが、相手は聞きながら初めて理解することになります。出来るだけゆっくり落ち着いたトーンで聞くようにしましょう。
インタビューは当然相手に語ってもらうものです。可能な限り相手に話してもらう量を多くするように心がけましょう。聞き手の話す量:話し手の話す量が1:9~2:8程度に収まるのが理想です。
当たり前のように使っている社内用語をインタビューで無意識に使ってしまうケースをよく見ますが、大抵相手には伝わりません。また横文字(ex.バリュー、イシュー)等も相手が使うなら使っても良いですが、こちらから連発しないように気を付けましょう。
こちらが意図していなくても、姿勢や話し方が相手に嫌悪感を与えてしまい、インタビューに支障をきたしてしまうケースも見られます。自分では気づけないことも多いので、チームでポジティブフィードバックをして修正するようにしましょう。
インタビュイーが問われたことに対して一生懸命回答しようとした結果、一気に多くを語ってしまうケースはよくあるものです。多く話してもらうこと自体は有難いものの、情報量が多いがゆえに「結局何が言いたいのだろう?」「どこから掘り下げればいいのだろうか…」とインタビュアー側が悩んでしまうケースもよく目にします。
このようなケースには、「ロジカルリスニング」という技法が役に立ちます。
「ロジカルシンキング」という思考様式を聞いたことがある方は多いと思います。自身が物事を考える際に論理的に構造化をしながら考えましょう、という様式です。切り口はMECEで設計するなどいろいろとコツはあります。ロジカルシンキングの詳細は他の書籍等に譲るとして、このロジカルシンキングを話を聞く場面で活用するやり方が「ロジカルリスニング」です。
インタビューにおいて、受け手側はそれほど論理的に話そうとは思っていません。受け手の話をしっかりと整理しながら紐解いていくことは、聞き手側の大事な役目なのです。以下にロジカルリスニングの具体的な手順を説明します。
先ほど図で示した「この会社を選ぶ理由」の回答をまず要素分解してみましょう。以下のような内容をパラパラと語っていることがわかります。
その上で、話を聞きながら再構築・構造化してあげる必要があります。今回の話は以下のようなツリー図に構造化できます。
個別具体的なことを聞きながらも、「この人はどんな視点で語っているのだろうか?」に想いを馳せることが重要です。こんなことを言いたいのでは?、この人はこんな視点で考えているのでは?…と想像しながらまとめていくイメージです。
なお、慣れたらこの要素分解や構造化を自分の頭の中で出来るようになります。慣れないうちは手元のメモに図を書きながら整理していくのも良いでしょう。
上図の様に整理ができたら、更に深堀したい内容を特定し、追加の質問を投げていきましょう。整理ができた後の頭の中はこんなイメージです。
このように整理することで、次に何を聞くべきかが見えてきます。
インタビューではいかに具体的な話を引き出せるかが重要です。このためには、「量感」「時間軸」「比較対象」の3つを意識しましょう。
例えば「長く残る会社である」という回答に対し、”長い”とは何年なのか。「初任給が良い」という回答については、他社や業界水準と比べて何倍なのか。等、定量を測定する問いと総体の基準を常に確認するように心がけましょう。
本記事では、事業開発のみならずビジネスにおけるインタビュー全般で役立つ方法論について解説しました。インタビュースキルは事業開発において、顧客・市場を正しく理解する上で必須のスキルと言っても過言ではありません。
是非、常日頃のコミュニケーションから、意識して活用して練習してみてください。
※新規事業開発に特化したインタビューノウハウに関しても別途記事で解説する予定です。引き続き弊社コラムを御参考いただけますと幸いです。
記事内でも言及いたしました、インタビューの実態調査レポートを以下より配布しております。
新規事業開発におけるインタビュー調査のあり方について重要な示唆が得られる結果となっておりますので、是非こちらも合わせてご覧ください。